LTspiceは、アナログ・デバイセズ社から無償で提供されており数多くのモデルが用意されています。しかし、日本で一般的に使われている半導体モデルが用意されていないため、回路設計時において不便さを感じることがあります。
今回の投稿内容は、YouTubeに動画でUPしています。
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ライブラリの構成
モデルを追加する前に、LTspice XVIIの各ライブラリが格納されているディレクトリ構成について理解しておく必要があります。
ライブラリのディレクトリ構成
LTspice XVIIでは、libフォルダの中に各ライブラリが格納されています。
ドキュメント\LTspiceXVII\lib
libフォルダの中に、”cmp”、”sub”、”sym”の3つのフォルダが格納されています。
cmpフォルダ
cmpフォルダには、ダイオードやトランジスタ、FETなどの能動部品と抵抗、コンデンサ、コイルなどの受動部品のデータファイルが格納されています。
■能動部品のデータファイル
- バイポーラ・トランジスタのデータファイル
- ダイオードのデータファイル
- JFETのデータファイル
- MOSトランジスタのデータファイル
■受動部品のデータファイル
- フェライト・ビーズのデータファイル
- コンデンサのデータファイル
- インダクタのデータファイル
- 抵抗のデータファイル
subフォルダ
subフォルダには、cmp以外のモデルが格納されおり、SPICEモデルで定義されている(*.sub)ファイルと複数の(*.sub)を含む(*.lib)ファイルがあります。
ここに格納されているモデルファイルは、symフォルダに格納されているシンボルファイルと1対1で紐付いています。
新しいモデルを追加する場合は、ここにSPICEモデルを追加し、symフォルダ内のシンボルと紐付けして使用します。
symフォルダ
symフォルダには、cmpやsubフォルダに格納されている全てのモデルのシンボルデータが格納されています。
新しいモデルを追加する場合は、ここに新規でシンボルを追加する必要があります。
SPICEモデルとは
新規モデルを作成するには、SPICEモデルが必要になります。一般的に公開されているSPICEモデルの中には、PSPICEモデルとなっているものもありますが、LTspiceでは殆どのPSPICEモデルが使用可能です。
SPICEモデルの種類
SPICEモデルは3種類あり、「デバイスモデル」、「サブサーキットモデル」、「IBISモデル」があります。なお、IBISモデルについては伝送線路シミュレーション用ですのでLTspiceでは使用しません。
以下に2つのモデルについて簡単に解説します。
デバイスモデル
デバイスモデルは、「.MODEL」のドット・コマンドで構成されパラメータのみで記述されています。
ダイオード、トランジスタ、MOSFET、JFETなどの能動部品は、このタイプです。
サブサーキットモデル
サブサーキットモデルは、「.SUBCKT」のドット・コマンドで構成され、パラメータのみでは実現できない場合に、等価回路と組み合わせて表現したものです。
SPICEモデルのファイル形式
各メーカが提供しているSPICEモデルは、殆どがライブラリファイル(*.lib)として提供されていますが、その他、シンボルやネットリストとセットとなっている(*.asy)、(*.mod)、(*.txt)、(*.cir)の拡張子が付いているファイル形式でも提供されています。
なお、(*.olb)、(*.scs)の拡張子が付いたファイルはLTspiceでは使用できないファイルですので無視してください。
ライブラリファイル(*.lib)
ライブラリファイル(*.lib)は、複数のモデルファイルを一つにまとめたファイルのことで、その中には、デバイスモデルやサブサーキットモデルを含みます。
.libファイルは、\subフォルダ内にそのまま格納します。
シンボルファイル (*.asy)
シンボルファイル(*.asy)は、部品のシンボルを定義しているファイルです。
.asyファイルは、\symフォルダ内にそのまま格納します。
ネットリストファイル(*.mod)
ネットリストファイル(*.mod)は、ネットリストのテキスト情報ですので基本的にはライブラリファイルと同じです。
.modファイルは、\subフォルダ内にそのまま格納します。
テキストファイル(*.txt)
テキストファイル(*.txt)は、ライブラリファイルをテキスト形式で保存したものなので、このままでは使用できません。
拡張子を、(*.lib)に変更し、\subフォルダ内にそのまま格納します。
サーキットファイル(*.cir)
サーキットファイル(*.cir)は、回路構成や計算内容を記述したテキストファイルで、基本的にはライブラリファイルと同じです。
.cirファイルは、\subフォルダ内にそのまま格納します。
SPICEモデルの提供メーカー
半導体・電子部品のSPICEモデルは、各半導体メーカから一部公開されていますので、これを利用します。その他、多くの方々がwebサイトで公開して頂いているので、これも利用させて頂きます。
下記に各半導体メーカのwebサイトの一部を紹介します。この中から追加する部品を検索しSPICEモデルをダウンロードしてください。
2022年1月更新しました。(掲載しているwebサイトは、2022年1月時点のものですのでリンクが切れている可能性があります。その際は、メーカのTOPページからアクセスしてください)
ROHM(オペアンプ、トランジスタ、ダイオード等)
Renesas(各種半導体)
日清紡マイクロデバイス(旧 新日本無線)(オペアンプ、電源IC等)

Texas Instrumens(各種半導体)
村田製作所(積層コンデンサ、インダクタ等)

日本ケミコン(電界コンデンサ等)
アナログ・デバイセズ(IC各種)
インフィニオン・テクノロジーズ(MOSFET、ダイオード、IC各種)
STマイクロエレクトロニクス(トランジスタ、ダイオード、オペアンプ、IC各種)

NXPセミコンダクターズ(MOSFETのみ)
パナソニック(コンデンサ、インダクタ等)
