負帰還(Negative Feedback)回路
ループゲインの話をする前に、負帰還回路について話をしておきます。
オペアンプは電圧利得が非常に大きく、かつ周波数帯域も狭いため、単体で増幅するには扱いが難しいことから負帰還回路を構成して増幅率や周波数帯域をコントロールします。
負帰還は、出力の一部をβ倍(β・Vo)して入力から差し引く(VI-β・Vo)ことで出力の振幅を抑え増幅回路の特性を改善します。
これを式で表すと
\(V_o=A・(V_I-\beta・V_o)\)
となります。更にこの式を展開して増幅率 \((V_o/V_I)\)を求めると
\(V_o+A・\beta・V_o=A・V_I\)
\((1+A・\beta)・V_o=A・V_I\)
\[A_{NF}=\frac{V_o}{V_I}=\frac{A}{1+A・\beta}\]
オペアンプ自体の増幅率
A・β:ループゲイン
入力へのフィードバック量
となり、これが負帰還の基本式となります。
増幅率(ANF)をクローズドループゲインといい、負帰還をかけた後の増幅率となります。
負帰還回路の利点
負帰還回路を構成することで次の利点が挙げられます。
- 利得一定で増幅可能となる周波数帯域が広がる
- オープンループゲインのばらつきが減少し増幅度の安定性が増す
- 歪みを抑えることができる
- 出力インピーダンスを低くできる
- 入力インピーダンスを高くできる
今回は、1の「利得一定で増幅可能となる周波数帯域が広がる」とう利点ついて、LTspiceを使って検証したいと思います。
下図のようにオープンループゲイン(電圧利得)からループゲイン(フィードバック量)を引くことにより、電圧利得が一定になる周波数帯域が広がることが分かります。
逆に、周波数帯域を広く取りすぎるとクローズドループゲイン(負帰還をかけた回路の増幅率)は小さくなってしまいますので、回路仕様のバランスをとって決める必要があります。
ループゲインのシミュレーション
前回投稿したオープンループゲインの測定で使用した回路を流用して、ループゲインについてシミュレーションしてみたいと思います。
オペアンプは、同じく新日本無線の汎用オペアンプ(NJM4558)を使用します。
上図の回路図をブロック図で表すと下記のようになります。
オペアンプの基本式より、出力(VOUT)は
\(~~~~~~V_{OUT}=A・(V_{IN+}-V_{IN-})=A・(0-V_{IN-})\)
$$=-A・V_{IN-}\tag{1}$$
となります。式(1)より、オープンループゲイン(A)は
\[A=-\frac{V_{OUT}}{V_{IN-}}\]
で求められます。
マイナス入力端子の電圧(VIN-)は帰還率(β)に電圧(VIN)を掛けたものなので、
$$V_{IN-}=\beta・V_{IN}\tag{2}$$
となります。
式(2)を式(1)に代入し、ループゲイン(A・β)を求めると
$$V_{OUT}=-A・\beta・V_{IN}$$$$A・\beta=-\frac{V_{OUT}}{V_{IN}}$$
となります。
増幅率(β)は、
$$\beta=\frac{R_1}{R_1+R_2}=\frac{10k}{10k+20k}=\frac{1}{3}\fallingdotseq0.3$$
となり、電圧利得に換算すると
$$G=20・\log0.3\fallingdotseq-10[dB]$$
となります。よって、ループゲインはオープンループゲインより10 [dB]小さい値となることが分かります。(このように全体的にシフトするような特性となります)